一階の本堂で御参りして二階へ。
たくさん並ぶ仏壇の列。

その一番奥に彼女は眠っていた。

手を合わせてから仏壇の扉を・・・・。
そこには笑顔の彼女がいた。

『やっと来たな。 ご苦労ご苦労』

家にある写真と同じなはずなのに、その笑顔は本当に今笑っているみたいだった。

最初は普通に立ったまま話しかけてたけど、下に眠る彼女にちょっとでも近付きたくて、気づいたら仏壇に寄りかかる感じで話してた。

綺麗に磨かれた仏壇に、遺影に、過去帳に、ベタベタト指紋を付けまくった。

“私がここに来た証に”

外では蝉が鳴いている。
うだる様な暑さはこの中までは入り込めないのか。
死者が眠るこの中はやわらかい風に包まれている。

さっきまでの死ぬかと思うほどの気持ち悪さは全く無くなって、いつまでもここに居たかった。
でも、ま、そんな訳にも行かないか。

私の体に入って良いよ。
ダイチに逢ったら私の体に入って、思いっきり抱きしめてあげていいよ。
私の体、貸してあげるよ。


彼女に別れを言って、また来るからねと言って、その場を後にした。

外の公園でちょっと休もうと思った。
が、外に出て5分も経たずに断念。
暑くて死にそう。

『油断すんなよ! 無事に帰ってまた来いよ』

ニヤリと笑ったように思えた。

タクシーに来てもらい 『汽車は何時ですか?』 と聞かれた時、5分後だと気づいた、その次は40分後。
『5分じゃ付かんわね』
良いです、別に急ぐ事ないので。
でも40分何処で時間潰すのよ・・・・。

運転手さんが急いでくれたらしく、ぎりぎりジャストの時間に着いた。
『ありがとうございました。 又のご利用を』
ありがとう。 
でももう当分来れないから又のご利用はいつになるか・・・。

急いで切符を買おうとホーム入り口へ。
そこには小さなホワイトボード。

『運休』

はっ?
えっ?
どゆコト?

『あのぉ、今度の大分行きは・・・』

『運休ですよ、来ません』

来ません、て・・・。

『一日?』

『え〜と、11:58に来ます』

約一時間・・・・。
しかも朝の事もあるから、本当に来るかもわかんないよねぇ。

『あの、大分までタクシーだといくら位かかります?』

『さぁ、それはわかりませんね』

わかんないの? 行ったこと無いの?

『電車だと10分くらい、タクシーだと15分ちょっと位かな』

なんだ、そんなもんか、良かった。

200mくらい歩いて、タクシー会社へ・・・・。
“又のご利用”は5分後でしたよ。

『電車、運休なんですって』

『へえ止まってるんだ』

『よくあるんですか? 朝も遅れてたし』

『いいえ、あんまり聞いたこと無いですね』

珍しいのにそんなに驚かないの?
いい街だね、関東じゃ有り得んよ。
てか、なんなの?
私、大分中から歓迎されとらんの?

駅についてタクシー降りたとたん暑さにクラッと来た。
トキハまで歩いて、バスまでまだまだ一時間以上。
トキハ地下を物色して時間を潰す。

博多までのバスは又気持ち悪いのかもしれないから、あんまりお腹に入れるわけにも、全く空腹でもヤバイので、吉野名物鶏飯のおにぎりにした。

また来るからね、大分。

疲労回復のパインジュースを飲んでいざ、博多へ。

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