つづき。
2003年4月22日“リア”の再演と前後しちゃうけど・・・。
“羽衣”の時、やさしい美術サンと手伝いの私が衝突した。
理由は、それまで全面的に劇団の受付も担当してきた彼女が、今回をもって好きな美術に精進するため劇団の手伝いを退く、と言ったこと。
『じゃあ今後のために今回の公演はあたしがメインで動いて、わからないこと教えてもらうね』
『そんなに難しいことじゃないから教えることなんてないから、私が全部する。 最後だから』
『次回の公演もスムーズに運ばなきゃ、役者達はたまらない。 ちゃんと引継ぎして』
そんな感じだったかな。
私には美術の身勝手にしか思えなかった。
最後、全部一人でやり終えたいのもわかる。
でも、劇団は続いていく、美術サンのものじゃない。
『あなたにちゃんとわかってもらうために、帰り話そう』
そう言ったのは美術サン。
話し合う様な事か?
私は理解できなかったけど、劇場の周りをゆっくり歩いて気持ちを整理した。
『わかったよ。 帰り、お互い納得するように話そう』
『ううん、いいの。 もういいの。 ごめんね、もういいからね』
“やさしいい良い人”と評判の美術サンはそうやって、一人で問題を終わらせてしまった。
☆
その日の終演後、みんなと飲んでから、私は石丸の家に泊まるので丸の内線に二人で乗った時この話をした。
ものすごくやり切れない、モヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
『うえ〜ん。 うえっうえっ。(泣) 可哀相。 なんで? それじゃ、まるであんたが悪者じゃん。 言ってる事はあんたが正しい。 なのにその態度は“私が妥協するわ、私良い人だから”って言ってるみたいじゃん。 うえ〜ん。 可哀相。 みんなみんな美術の味方するんだ。 “あいつはワガママだから、美術はやさしいから”とかって。 あんたが一番劇団の事考えてくれてるのに』
『なに? それ泣いてんの? (爆笑)』
マンガの吹き出しみたいに泣くんだよね、石丸。
『あたし昔からこんな泣き方。 だからなるべく泣かないんだ』
その後も石丸は私のために泣き続け、私はそんな石丸の泣き方が、可笑しいのと嬉しいのとで笑い泣き。
後にも先にもあの時だけ、石丸が泣いた姿見たの。
☆
この後イマイさんとジュンちゃんと私達の四人で《THE OPEN SESAME》と名乗って小公演をやった。
ただただ楽しい芝居を目指した。
“青い鳥”や“遊◎機械全自動シアター”みたいに役者も観客もみんなが楽しめる芝居。
本公演の“山猫”をはさんで2本。
“ままごと”と“生きる歓び”。
すごく楽しかった。
苦労もいっぱいあったけど、性格分かり切った仲間だけだったから、良い物が出来たと今でも思ってる。
私の書いた稚拙な台本。
みんなで意見しあっても上手く出来ず、結局劇団の座長に演出を頼んだ。
『演出ひとつでこんなに変わるんだ!』
改めて座長を尊敬したっけね。
今ビデオで観ても、楽しいのはこの2本がダントツ。
☆
“リア”の再演後、劇団の起死回生“山猫”には“リア”初演の客演女優アキバさんが返り咲き。
この時初めて石丸の名前がトップに立った。
『ま、当然でしょ』
うん、誰よりも努力したもんね。
でも百戦錬磨のアキバさん、石丸はそれに巻かれてしまった。
石丸の演技が出来ていない、アキバさんペース。
稽古を見て私もショウジさんも危惧した。
(ショウジさん=アキバさんの元彼。私の現夫)
石丸も悩んでたね。
でも、どうして良いかわからなくって最後までもがいてた。
仕込みの日、ショウジさんのアドバイスで吹っ切ったって、言ってたね。
『アキバさんはああいう自己主張の演技しか出来ない。 主役が呑まれちゃダメだ』
そうだよ、あの人のは自分だけの芝居、自分のためだけの芝居。
観客無視の芝居なんか、しちゃいけない。
翌日の初日に、みごと立て直すなんて、本当に“役者”になったよねぇ。
しかも直前にお父さんが倒れたっていうから、立派だったよ。
★
私の試練はこの後だ。
“山猫”は石丸扮する少年と、アキバさん扮するサーカスのブランコ乗りを目指す孤独な少女マリの幼い恋の物語。
公演後
『アキバさんが愛おしくて忘れられない。 ずっと恋してる役だったから、急に会えなくなってせつない。 レズじゃないんだけど、次の芝居に入るまでこの気持ち消えないのかなぁ。 変なんだけど本当に片想いしてるみたい』
だったら私の方が可笑しいんじゃないか?
そんな事を言う石丸に、現実にやきもちを焼いてる。
アキバさんに嫉妬してる。
その頃付き合い始めたショウジさんに
『アキバさんの何処が良いの? ショウジさんだって、本当はまだアキバさんが好きなんでしょ? あたし、みんなアキバさんに取られちゃうんだ。 ショウジさんだったら良いよ、あげる。 でも石丸はイヤ! 絶対イヤ!』
ああ(笑)真剣にそう言ってたなぁ。
思いっきりボロボロ泣きながら。(笑)
『石丸とショウジさんが溺れてたら、あたしは何が何でも石丸を助けるからね。 ショウジさんは自力でなんとかしてね』
私、やっぱ可笑しいな。
こんな私を哀れんで、ショウジさんはずっと私と居てくれてるんだな。(笑)
石丸は私の気持ちなんて知らないから、アキバさんの事を愛しく語る。
それからしばらく、片想いのせつない日々が続いた。
少女マンガの世界だね。
でも決して私も、レズじゃない!(笑)
☆
“山猫”の後、“生きる歓び”で私は舞台を降りた。
その次の“赤穂浪士”で石丸も舞台を降りた。
1994年。
まるで夢から覚めたみたいに・・・。
“羽衣”の時、やさしい美術サンと手伝いの私が衝突した。
理由は、それまで全面的に劇団の受付も担当してきた彼女が、今回をもって好きな美術に精進するため劇団の手伝いを退く、と言ったこと。
『じゃあ今後のために今回の公演はあたしがメインで動いて、わからないこと教えてもらうね』
『そんなに難しいことじゃないから教えることなんてないから、私が全部する。 最後だから』
『次回の公演もスムーズに運ばなきゃ、役者達はたまらない。 ちゃんと引継ぎして』
そんな感じだったかな。
私には美術の身勝手にしか思えなかった。
最後、全部一人でやり終えたいのもわかる。
でも、劇団は続いていく、美術サンのものじゃない。
『あなたにちゃんとわかってもらうために、帰り話そう』
そう言ったのは美術サン。
話し合う様な事か?
私は理解できなかったけど、劇場の周りをゆっくり歩いて気持ちを整理した。
『わかったよ。 帰り、お互い納得するように話そう』
『ううん、いいの。 もういいの。 ごめんね、もういいからね』
“やさしいい良い人”と評判の美術サンはそうやって、一人で問題を終わらせてしまった。
☆
その日の終演後、みんなと飲んでから、私は石丸の家に泊まるので丸の内線に二人で乗った時この話をした。
ものすごくやり切れない、モヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
『うえ〜ん。 うえっうえっ。(泣) 可哀相。 なんで? それじゃ、まるであんたが悪者じゃん。 言ってる事はあんたが正しい。 なのにその態度は“私が妥協するわ、私良い人だから”って言ってるみたいじゃん。 うえ〜ん。 可哀相。 みんなみんな美術の味方するんだ。 “あいつはワガママだから、美術はやさしいから”とかって。 あんたが一番劇団の事考えてくれてるのに』
『なに? それ泣いてんの? (爆笑)』
マンガの吹き出しみたいに泣くんだよね、石丸。
『あたし昔からこんな泣き方。 だからなるべく泣かないんだ』
その後も石丸は私のために泣き続け、私はそんな石丸の泣き方が、可笑しいのと嬉しいのとで笑い泣き。
後にも先にもあの時だけ、石丸が泣いた姿見たの。
☆
この後イマイさんとジュンちゃんと私達の四人で《THE OPEN SESAME》と名乗って小公演をやった。
ただただ楽しい芝居を目指した。
“青い鳥”や“遊◎機械全自動シアター”みたいに役者も観客もみんなが楽しめる芝居。
本公演の“山猫”をはさんで2本。
“ままごと”と“生きる歓び”。
すごく楽しかった。
苦労もいっぱいあったけど、性格分かり切った仲間だけだったから、良い物が出来たと今でも思ってる。
私の書いた稚拙な台本。
みんなで意見しあっても上手く出来ず、結局劇団の座長に演出を頼んだ。
『演出ひとつでこんなに変わるんだ!』
改めて座長を尊敬したっけね。
今ビデオで観ても、楽しいのはこの2本がダントツ。
☆
“リア”の再演後、劇団の起死回生“山猫”には“リア”初演の客演女優アキバさんが返り咲き。
この時初めて石丸の名前がトップに立った。
『ま、当然でしょ』
うん、誰よりも努力したもんね。
でも百戦錬磨のアキバさん、石丸はそれに巻かれてしまった。
石丸の演技が出来ていない、アキバさんペース。
稽古を見て私もショウジさんも危惧した。
(ショウジさん=アキバさんの元彼。私の現夫)
石丸も悩んでたね。
でも、どうして良いかわからなくって最後までもがいてた。
仕込みの日、ショウジさんのアドバイスで吹っ切ったって、言ってたね。
『アキバさんはああいう自己主張の演技しか出来ない。 主役が呑まれちゃダメだ』
そうだよ、あの人のは自分だけの芝居、自分のためだけの芝居。
観客無視の芝居なんか、しちゃいけない。
翌日の初日に、みごと立て直すなんて、本当に“役者”になったよねぇ。
しかも直前にお父さんが倒れたっていうから、立派だったよ。
★
私の試練はこの後だ。
“山猫”は石丸扮する少年と、アキバさん扮するサーカスのブランコ乗りを目指す孤独な少女マリの幼い恋の物語。
公演後
『アキバさんが愛おしくて忘れられない。 ずっと恋してる役だったから、急に会えなくなってせつない。 レズじゃないんだけど、次の芝居に入るまでこの気持ち消えないのかなぁ。 変なんだけど本当に片想いしてるみたい』
だったら私の方が可笑しいんじゃないか?
そんな事を言う石丸に、現実にやきもちを焼いてる。
アキバさんに嫉妬してる。
その頃付き合い始めたショウジさんに
『アキバさんの何処が良いの? ショウジさんだって、本当はまだアキバさんが好きなんでしょ? あたし、みんなアキバさんに取られちゃうんだ。 ショウジさんだったら良いよ、あげる。 でも石丸はイヤ! 絶対イヤ!』
ああ(笑)真剣にそう言ってたなぁ。
思いっきりボロボロ泣きながら。(笑)
『石丸とショウジさんが溺れてたら、あたしは何が何でも石丸を助けるからね。 ショウジさんは自力でなんとかしてね』
私、やっぱ可笑しいな。
こんな私を哀れんで、ショウジさんはずっと私と居てくれてるんだな。(笑)
石丸は私の気持ちなんて知らないから、アキバさんの事を愛しく語る。
それからしばらく、片想いのせつない日々が続いた。
少女マンガの世界だね。
でも決して私も、レズじゃない!(笑)
☆
“山猫”の後、“生きる歓び”で私は舞台を降りた。
その次の“赤穂浪士”で石丸も舞台を降りた。
1994年。
まるで夢から覚めたみたいに・・・。
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